まず,セシウム,ストロンチウムの素性を知っていることが肝心である.これらは地球上にはごくわずかしか存在しない元素で,周期表ではそれぞれ1族(アルカリ金属),2族(アルカリ土類金属)に属する.すなわち,セシウム,ストロンチウムは,それぞれの弟分に当たるカリウム,カルシウムと同じ挙動をとっていると理解しておれば当たらずとも遠からずと考えて良い.
セシウム-137
Cs-137 は30.07yの半減期でβ壊変してBa-137になる.より詳しく見ると,94%は0.514 MeVのβ線を放出してBa-137m(mはmeta stable準安定状態を意味する)になり,後者は0.662 MeVのγ線を放出してBa-137(安定)になる.残りの6%は1.17 6 MeVのβ線を放出して直接Ba-137になる.“Cs-137 を半導体検出器で計数する”というのは,その娘核種Ba-137mのγ線を計数しているのである.
ストロンチウム-90
Sr-90は半減期28.8 yの半減期で,0.546 MeVのβ線を放出してY-90(イットリウム)になる.後者は64.1時間の半減期で2.282 MeVのβ線を放出してZr-90(ジルコニウム,安定)になる.化学分離したSr-90 試料の中にはY-90が生成してくる.これを暫く放置すると,Y-90の,生成する量と崩壊する量が等しくなる状態(放射平衡)になる.Y-90は何回でも搾り取ることができる.この操作をミルキングという.このような事情から,化学分離した計数試料は十分時間(Y-90の半減期の6倍以上)放置してから計数することになっている.
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