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5. 極低レベル C-14 標識薬物投与実験

はじめに

 わが国でも,最近までタブー視されてきた,ヒトにおける低 C-14 標識薬物投与実験を実施しようとする気運が高まりつつある.解明を求められている課題は,血中濃度の経時変化,尿糞中への排泄速度及び血中及び尿糞中の代謝物パターンなどである.後者の解明にはクロマトグラフ的分離分析が必要になる.これらの課題の解決を可能にする C-14 量が必要にして充分な投与量である
 他方,放射能の測定法として求められる条件は,極低放射能(例えば,1μCi)の服用で前記の諸課題が解決できる感度を有していること,合理的な額の設備投資で実験態勢が整えられ,かつランニングコストが安いことの 3 つである.
 C-14 標識薬物のヒトでのマスバランス試験として加速器質量分析法(AMS)が提案されているが(1),この方法には次のような問題がある.設備,測定コストともに超高額である.この方法では,Bq量を服用し,試料中の全炭素をグラファイトに変換してC-14/C-13をAMSで求め,この比と排泄された全炭素量からC-14のモル量を算出し,再びBq量に戻すという回りくどい過程をとっている.これらの次元変換過程で誤差が入る恐れがある.もう1つの問題は,C-14存在比の変動をどのように評価するかである. 2.1 薬物動態研究に用いられる同位体で指摘したように,生物体におけるC-13の存在比は生物濃縮よる影響を強く受けるので,N-15と異なって,C-13は存在比の変動の大きい同位体である.両同位体の存在比の比から,何を主食にしているかを割り出す方法がある.C-14の同位体存在比の変動については明らかにされていないが,C-13のそれよりも大きいと考えるのが妥当である.
 1μCi C-14 標識薬物を投与して,血中濃度の経時変化並びに尿糞排泄速度の解明に,生体試料を直接測定できる low BG LSC を,代謝物パターン分析にはマイクロプレート RLG でオフライン計数する Radio HPLC を提案する.なお, 1μCi は血中代謝物パターンの解明までを計画したときの投与量である.本章のQ and A 5.7に試算しているように,マスバランス研究だけなら投与量は0.1μCiで十分である.
 結論については1.1 チャレンジングデータで述べた.ここでは主として低バック LSC について解説する.
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