6.1 放射化学的見地から見たWBAの問題点
a. 放射能の測定 Fs.abを補正する過程が欠落しているので,現行法では放射能を求めることはできない.臓器摘出-液シンによる計数法ではBq/kg(wet
tissue) を,WBA-RLGではβparticles/m2(lyohylized tissue surface) を見ており,“次元の異なる値を比較する”という数学的誤りを犯している.
b. 標準線源の問題 WBA切片各臓器と標準線源のFs.abは異なるので,PSL値から放射能を算出することはできない.更に,“標準線源はメーカー,投与量は自分の液シン”というダブルスタンダードになっている.
c. RLGにおける問題点 BASの感度における面均一性の問題が無視されている.ユーザー側はバリデートしないままRLGを行っている.
これらのうち,c. については3. ラジオルミノグラフィーによる放射能の定量で解説したので,ここでは要点だけを指摘しておく.BASにおいて,有限長さの光学系でIP上に記録された放射線エネルギーをIP全面に渡って均一感度で読取ることは無理な話である.
PSLの読取りは縦(IPの短い方向,メインスキャン)と横(サブスキャン)の2方向に渡って行われる.例えば,それぞれのスキャンにおける±1%(普通なら許容範囲)の差が四隅のうち.対角線上にある2隅では互いに打ち消し合って±0%になり,他の2隅では互いに強調し合って±2%になる.すなわち,最高と最低では4ポイントもの差が出るということである.1.2
BAS の感度均一性と校正に示したように,このような異常値を示すエリアがあることを念頭においておるべきである.
|